Google Commerce Searchが終了した?
Google Commerce Search(Googleコマースサーチ)というのはECサイトに特化した検索ソリューションで、日本での導入事例としてはディノスや紀伊国屋書店が有名です。
ところがGoogleはひっそりとGoogle Commerce Searchを終了していました。オフィシャルに発表があった訳ではなく、ブログに声明が書いてある訳でもなく、いつの間にかメニューから外したような状態です。ちなみに日本語ではまだサービス紹介のページがありますが、英語ではGoogle Enterprice SearchのメニューにCommerce Searchはありません。ただ日本語のGoogle Enterprise Search のページはフッターが「©2012 Google」となっているのであまり更新されていないようです。
私が調べたところ、下記の記事が唯一のソースになっています。
Google Quietly Shutters Commerce Search For E-Retailers, TechCrunch, 2013/2/14
TechCrunchによるとGoogleは以下のようにコメントしています。
We are making a strategy shift towards offering more flexible, easier to adopt modules for retailers, such as the Search As You Type widget, rather than a full site search replacement and therefore will no longer be offering Google Commerce Search as a core site search replacement product. We will continue to support our current retail customers using GCS and will try to help them on the best migration process to alternate solutions.
「戦略の変更によりフルサイトサーチを提供するのではなく"Search As You Type"ウィジェットのような簡単に使えるモジュールを提供していく」ということのようです。
GoogleはGoogle Search Applianceというハードウェアを提供しているので、今後、ECサイトサーチのニーズはアプライアンスで満たして行こうと考えているのだと思います。ただし、Google Search ApplianceはECに特化した製品ではないため、どれだけECサイトのニーズを満たせるかは微妙なところです。
以下の記事ではGoogle Commerce Searchの終了のタイミングについて次のように書いてあります。
Google will phase out Google Commerce Search, Internet Retailer, 2013/2/19
Google didn’t give a deadline for when it would expect online retailers using Commerce Search to migrate to another site search application. But Shaun Ryan, CEO of site search vendor SLI Systems, says SLI has been speaking with existing Google Commerce Search clients who have said they need to deploy a new site search system by January 2014.
「2014年1月」までに移行しなければならないと言っている既存のクライアントがいるようです。
TechCrunchの記事が今年の2月ですので、約1年くらいの移行期間ということでしょうか。
このInternet Retailerの調査によるとGoogle Commerce Search の利用社数は次のようになっています。
Google Commerce Searchのシェア
Top500位のECサイトのうち: 20サイト
500-1000位のECサイトのうち:14サイト
これを見て私は正直「少ない」と思いました。Googleほどの大企業が一つの製品を維持するほどの売上をあげているとは思えません。
Google Commerce Searchはなぜ終了したのか
Googleコマースサーチがあまり広まらなかった理由を考えてみましょう。
1. セルフサービス
Googleは「セルフサービス」を愛する文化を持つ会社です。AdWords、Analyticsなど革命を起こしているプロダクトは全て「セルフサービス」になっています。つまり利用者側が自分でサイトに実装して、設定して、運用するという方式になっています。
Google Commerce Searchでも同じアプローチを取りましたが、この「セルフサービス」アプローチがECサイトに受け入れられなかったと思います。
ECサイト側は検索について「素人」です。ほとんど知識を持っていません。これはECサイトの開発運営を行っているSIer、ECサイトパッケージベンダーも同様です。
「セルフサービス」はやるべきことを分かっている人が、わざわざ人に頼まないでも自分で出来るというのが一番のメリットだと思います。検索の場合にはそもそもなぜ検索結果が悪いのか、どうすれば良くなるのかを理解していないため「セルフサービス」ではどうやってよいか分からないということになりがちです。
2. カスタマイズ
「セルフサービス」と重複する部分もありますが、「セルフサービス」では仕様があらかじめ決まっています。Googleの想定している仕様では収まりきれないECサイトは、「カスタマイズ」をしたくなりますが、「セルフサービス」型のサービスではそもそも「カスタマイズ」を許容していないため、カスタマイズニーズのある大規模なECサイトには受け入れられなかったのではないかと思います。
3. 料金
Google Commerce Search の利用料金は$25,000/年から始まり、検索数と商品数が増えると料金が増えるモデルです。この料金設定は大規模ECサイトから見ると「安い」と思いますが、先ほど述べた通り「カスタマイズ」できないため利用しづらい。一方で、「セルフサービス」で想定していた数多くの小規模ECサイトから見ると「とても高い」と思います。
毎月20万円ほどの利用料金を払うためには最低でも月に数千万円程度の売上が必要だと思うのですが、このくらいの規模のECサイトではそこまで商品数が多くないので、検索にお金を使うのは気が引けるのはないかと思います。それよりは安いレコメンドを導入した方が良いと考えると思います。彼らが期待するのはAnalyticsのような「無料」または「無料に近い」サービスです。
4. 運用
検索は一度導入したら終わりではありません。効果は上がっているかを常にトラッキングして「改善をし続ける」必要があります。そのためにある程度の「運用コンサルティング」が必要ですが、「セルフサービス」のお客様に大して「運用コンサルティング」を続けるようなサポート体制を用意するとは思えません。
ECサイト向けの商品検索はどうあるべきか
最後に、ECサイト向けの商品検索はどうあるべきかを考えたいと思います。
1. お客様に使いやすく
当たり前ですが、ECサイトは エンドユーザーとなるお客様(消費者)にとって使いやすくないといけません。そのためには検索だけでなく、あらゆるUXの改善が必要です。そもそも検索を改善する必要があるのか、もしかして他にやるべきことがあるんじゃないかと調査することが重要です。
2. データ、データ、データ
サイトを改善するためにはお客様の行動を全てログに落とす必要があります。これらのログはUIの改善にも使えますし、検索エンジンのアルゴリズムの改善にも使えます。何をするにもデータを元に判断する必要があります。
3. 運用そして改善
何事も導入して終わりということはありません。特に大規模なECサイトでは商品はどんどん変わりますし、季節によって売れ筋も変わってきます。競合の動きも変わります。とにかく常に運用と改善のサイクルを回すことが必要です。
4. コンピュータ+人
ECサイトでは商品の登録や説明文の編集、カテゴリの分類など人がやらないといけない仕事がたくさんあります。検索だけ完全自動で回るという訳には行きません。同義語の設定や形態素解析辞書の登録、スペック情報の追加なども必要になります。運用と改善を回す中で、必ず人手のかかる仕事が必要になる時が来ると思いますが、そこでリソースをかけられる企業だけが良い検索エンジンを提供することが出来ます。
まとめ
Google Commerce Searchは終わっても、ECサイトが良い検索エンジンを求めるニーズがなくなった訳ではないと思います。単にGoogleの想定したビジネスにはならなかったということに過ぎません。
ユニナレ設立依頼、ECサイトにとってベストな検索エンジンは何かを追求してきましたが、これからも日本のECサイト のUser Experienceを底上げするために尽力して行きたいと思います。
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