「B2C」から「B2B」ヘ
もう一つ私の中での大きな違いは「B2C」から「B2B」です。これまで自社サービスだけを開発してきた私にとって「B2B」は未知の領域です。「B2C」では対象となるお客様の数が圧倒的に多いのが特徴です。それこそヤフー検索の場合には毎日数千万人(!)が使うのです。起業以前は「できるだけ多くの人に使われるサービスとは何だろう」ということばかりを考えていました。
それからヤフー時代には意識して「強者の考え方」をするようにしていました。どういうことかと言うと、小さなサービスや小さなディールにリソースを使わずに、大局を見て意味のあることをやろうと言うことです。強者だからこそ取れる戦略を大事にしていました。検索の分野では競合はGoogleなので、Googleだけを意識して考えていました。ある意味、「ヤフー殿様状態的思考方法」なのですが、ヤフーですからそれで良いのです:)また、そのような思考が許される環境というか、検索連動型広告という超高収益ビジネスモデルがありましたので、これをいかに上手に回すかを考えることがプライオリティNo.1でした。
Baidu時代にも同様の考え方をしていました。つまり「毎月の100万円よりも将来の100億円」のような発想がありました。これは今から考えると間違っていたと思います。うーん、間違っていたというと強すぎますが。
Baiduは確かに中国でNo.1の検索の会社ですが、日本では無名です。「うまく回るビジネスモデル」を確立する以前の状態が続いていました。ネットサービスの特徴ですが、まずはトラフィックを集めないと、その後のマネタイズは出来ません。「トラフィック->ビジネスモデル->マネタイズ」の循環を回して行かないといけないのですが、一番手前のトラフィック獲得のところから前に進めなくなりました。一方、検索エンジンの開発と運用には膨大な資金が必要なことは既に説明した通りなので、後はどこまで我慢できるかという話になります。株主、役員会を納得させないと、継続投資は出来ないのが、上場企業の定めです。
上場企業のことはまた別に書きたいと思っていますが、とにかく一番重要なのは「利益が出る構造を早く作る」ことです。利益さえ出ていれば多少の無理や希望も通ります。Baiduでは利益を作る構造を作れなかったことが強烈な反省材料として残りました。
起業を真剣に考えた場合、まず一番重要なのが「どうやって利益を出すか」だと思います。私のように自己資金で小規模にビジネスを始める場合には、早急に自分たちが食える分の売上を上げなければなりません。それには「B2C」では時間がかかりすぎるのです。先ほどの話と全く逆で「将来の100億円より、今月の100万円」が重要なわけです。そのため「B2B」というビジネスを選択しました。
私のようにB2Cにどっぷり浸かってきた人には発想の転換が必要ですが、ほとんどの人はそこまで考えなくて良いかも知れません。私の中での発想の転換というのは、
「何千万人の人を喜ばせるよりも、まずは自分の周りで困っている10人の人の役に立つ」
ということです。これは目から鱗でした。
良く世の中を眺めてみると、色々な商売の人が自分たちの周りのお客様を喜ばせることによって成り立っています。例えば小規模の税理士事務所の場合、どんなに多くても300社程度のクライアントだそうです。日本にこれだけたくさんある会社の中で「たった300社だけ」を満足させるサービスが提供できれば、世の中の平均以上に豊かな生活が送れます。
知り合いのB2Bをやっているネット企業の場合にも、社員数が40数名と既に中規模クラスですが、40〜50社のクライアントでやっているそうです。
クリーニング屋さんも同様ですね。近所の数百人から千人程度の人たちを満足させれば十分にやって行けるわけです。ラーメン屋さんも同程度だと思います。
私のように大企業育ちの人の場合には、どうしても「戦略」とか「マーケットシェア」と言った発想をしがちですが、小規模ビジネスの場合これらには意味がありません。ここに大きな落とし穴があります。
「自分の周りで困っている人を助けるだけで十分ビジネスになる。」
という発想がないと起業できないでしょう。
私の場合、5社のお客様がいれば十分にやっていけます。自分たちの提供しているサービスを考えた時に、この広い世界で5社を満足させれば良いというのは、全てがブルーオーシャンに見えるような感じです。
(つづく)
コメント